
日本では近年、利上げを伴う金融政策が段階的に実施されています。若い世代を中心に、「利上げ」という言葉自体にはあまりなじみがなく、よくわからないというかたも多いかもしれません。そこで今回は、利上げの内容と文京区では利上げによってどのような影響がありそうなのかについてまとめてみました。
金利・政策金利とは
金利とは、お金を借りた際に支払う利息、あるいは貸した側が受け取る利子を決める割合のことです。いわば「お金の貸し借りの際に生じる余分なお金の割合」とも言えます。この利息や利子は、住宅ローンやカードローンなど、私たちの身近な金融取引にも深く関わっています。
政策金利は、景気や物価の安定といった金融政策上の目的を達成するために、中央銀行が定める短期金利のことです。日本では日本銀行が政策金利を設定しています。
政策金利を決めるもの
政策金利は、日本銀行が景気や物価の安定を目的として決めています。決定にあたっては、物価上昇率や経済成長率、失業率といった経済指標をもとに、現在の日本の経済がどのような状態にあるのかを見て判断されています。
なぜ日銀が政策金利を決めるのか?
政策金利を含む金融政策は「政策」ではありますが、政府ではなく日本銀行が担っています。
その理由の一つは、金利を操作する権限を政府が直接持つと、選挙や短期的な景気対策を優先し、過度に金利を変えてしまうおそれがあるためです。
通常、金利が下がればお金は借りやすくなり、消費や投資が活発になりますが、行き過ぎると物価の急上昇や金融の不安定化につながることもあります。このような混乱を防ぐために、日本では政府から一定の距離を保った日本銀行が、経済状況を分析しながら政策金利を決める仕組みが採られています。
政策金利の変遷
現在の日本は、低金利が当たり前であった時代から徐々に金利が上がっていく時代へと移り変わっていく時期とされています。では、今まで政策金利はどのように変わってきたのでしょうか。
1990年代初頭 バブル経済の崩壊
1990年代初頭の日本経済は、バブル経済の崩壊をきっかけに大きな転換点を迎えました。
地価や株価の急落により企業の経営環境は急速に悪化し、倒産件数が相次いで増加しました。
その影響は金融機関にも及び、融資先の経営破綻によって貸付金の回収が困難となり、多くの貸したお金が回収できない状況が長期化しました。これにより、銀行は新たな融資に慎重になり、経済全体の停滞が深まりました。
このため日銀は金融政策の一つとして、世界初のゼロ金利政策に踏み切りました。
2016年 マイナス金利の導入
2016年1月には、日本銀行がマイナス金利政策の導入を決定し、翌月に実際に適用を開始しました。
マイナス金利政策は、金融機関が日銀に預ける資金の一部に対してマイナスの金利を課すことです。この政策は、企業や個人への貸し出しを促し、景気を下支えする目的で導入されました。
2024年3月 17年ぶりの利上げ
日本銀行は2024年3月、長年続けてきたマイナス金利政策(▲0.1%)を解除し、政策金利を0〜0.1%程度へと引き上げました。これは2007年以来、約17年ぶりの利上げとなり、日本の金融政策が低金利時代から転換する節目となりました。
2024年7月 0.25%程度へ利上げ
2024年7月には、3月の利上げ後の経済や金融市場の動向を見極めたうえで、政策金利は0.25%程度へ追加利上げされました。賃金動向や物価の持続的な上昇が一定程度確認され、超低金利政策からの正常化を段階的に進める姿勢が明確になった時期です。
2025年1月 0.5%程度へ利上げ
2025年1月には、政策金利はさらに0.5%程度へ引き上げられました。急激な引き締めを避けつつも、金融緩和に強く依存してきた日本経済を、より自然な金利水準へ戻していく段階に入ったといえます。住宅ローンや企業の資金調達など、私たちの生活にも影響が意識され始めました。
2025年12月19日 0.75%へ利上げ
そして2025年12月19日には、政策金利は0.75%へ引き上げられました。現在(2025年12月時点)では、この0.75%が日本の政策金利となっています。マイナス金利時代と比べると、大きな転換が進んでいることが分かります。
現在、日本銀行は政策金利1.5%程度をひとつの到達目標とみているとされています。この水準に到達するには、今後も半年ごとに0.25%ずつ、あと3回程度の利上げが行われる可能性があると考えられています。
今までなぜ低かったのか
ここまで金利水準が低かった背景には、1990年代初頭のバブル崩壊とその後の不良債権問題の長期化がありました。バブル崩壊は地価や株価を急落させ、企業の倒産件数を引き起こしました。その結果、銀行は融資先の返済が滞り、貸したお金の多くが不良債権となり回収困難となりました。
日銀はこれに対応する形で、世界初のゼロ金利政策・量的金融緩和政策・マイナス金利政策・フォワード・ガイダンスといった政策を実施しました。
金利の変化による経済活動の変化
伝統的な経済政策では、中央銀行が金利水準を誘導することで経済活動の調整を図ることに主眼がおかれています。
経済活動が過熱しすぎてインフレを引き起こしそうな場合には、金利水準を高くすることでお金を借りることが難しくなるため経済活動が抑えられます。反対に景気が悪くなった時には、金利水準を引き下げることでお金を借りやすくし、経済活動を活性化していきます。
低金利でおこること
低金利の環境では以下のようなことが起こるとされています。
・企業は低コストで生産活動を続けられる
・消費や投資の伸びが弱く、需要が十分に拡大しにくい
・需要が伸び悩むことで、モノやサービスの価格が上がりにくくなり、インフレが起こりにくい経済状態が続く
金利が上がっていく局面で起こること
一方、金利が急激に上昇した場合には、次のような事象が起こりやすくなります。
・借入の利払いが増加し、資金繰りが悪化します
・国債価格が下落しますが、国は国債に対して支払う利子が増えます
利上げは生活にどのような影響があるか
利上げは、私たちの生活にも少なからず影響を与えます。基本的には、「お金を借りている人」には負担増、「お金を預けている人」にはプラスに働く傾向があります。以下では具体例を少し挙げていきます。
住宅ローンなどの負担増
住宅ローンでは、特に変動金利型の住宅ローンを利用している場合、金利上昇に伴って支払う利息が増えます。毎月の返済額が上がる可能性があります。
預金金利の上昇
銀行の預金は利息が増えるため、預けているお金が増えやすくなります。これまで利息がほとんど付かなかった時代と比べると、銀行に預けるメリットが大きくなります。
物価の抑制
利上げには、物価上昇を抑える効果があるとされています。金利が上がることで、住宅や設備投資などの大型の消費や投資が落ち着き、その結果、需要が過度に膨らみにくくなります。これにより、モノやサービスの価格が上がりにくくなることが期待されています。
円高による輸入品価格への影響
日本の金利が上昇すると、円建ての資産(国債・株式・短期金融商品など)の利息が増えます。その結果、円が買われやすくなり、円高が進む傾向があります。これにより輸入品の価格が落ち着く可能性があります
金利上昇と文京区について
ここまで見てきたように、金利の上昇は経済全体にさまざまな影響をもたらします。
子育て世代が多く暮らす文京区に目を向けると、より身近なところでは住宅ローンや奨学金といった分野で影響が現れやすくなります。
住宅ローン
住宅ローンには変動金利と固定金利がありますが、金利上昇の影響を受けやすいのは変動金利です。多くの人が利用する変動金利は政策金利に連動して上昇しますが、実際に返済額へ反映されるまでには、半年程度のタイムラグがあります。
住宅ローンについては、文京区や東京都、国が行っている支援制度や補助金を上手に組み合わせることで、住宅の購入や住み替えにかかる負担を軽くできる場合があります。金利が上がりつつある今だからこそ検討してみてもよいかもしれません。
奨学金
文京区は大学や専門学校が多いエリアで、近隣地域から通学する学生も多く、奨学金を利用する学生も少なくありません。
日本学生支援機構の貸与型奨学金には、無利子の「第1種」と有利子の「第2種」があり、利上げの影響を受けるのは第2種奨学金です。第2種奨学金は、一般的なローンと異なり、在学中は利息が発生せず、卒業時に利率が決まる仕組みです。そのため、今後の金利動向によって、将来の返済額が変わる可能性があります。
利上げと文京区のまとめ
いかがだったでしょうか。金融という少し馴染みのないテーマでしたが、「いつの間にか支払いが増えてた…」とならないためにも、政策の影響を知っておくことは大切ですね。文京つーしんでは、皆様の役に立つ情報を配信しておりますので引き続きよろしくお願いします。
※本投稿は特定の投資や金融商品の購入をおすすめするものではありません。
あくまで暮らしに関わる情報共有としてご覧ください。



































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