
東京都文京区には、都心を象徴する幹線道路や商業施設がある一方で、豊かな緑地や庭園、歴史的建造物も数多く残されています。坂道や緑、史跡が織りなす街並みは、東京のほかの地域とは異なる、文京区ならではの魅力です。今回は、こうした文京区の景観の特徴と、それを守るための取り組みについて紹介します。
景観とは
景観とは、建物や看板、道路、公園、木々の緑など、私たちが日常の中で目にしている、まちの様子や風景を表す言葉です。ただし、景観を形づくるものは、目に見える建物や自然だけではありません。その地域に受け継がれてきた歴史や文化、商店街のにぎわい、公園で過ごす人々の姿、地域で行われる祭りや行事など、人々の暮らしや活動も景観を構成する大切な要素です。
文京区はどのような地形なのか
まずは、文京区の景観を形づくる地形から見ていきましょう。
東京全体から見た文京区
文京区は、青梅市付近を頂点として扇状に広がる武蔵野台地の最東端に位置しています。区の東側に隣接する地域には、中川・荒川低地が広がっています。

東京の標高(資料:景観計画参照)
区内の標高は、後楽一丁目の海抜3.1メートルが最も低く、大塚五・六丁目、目白台三丁目、小日向二丁目付近では海抜31メートルを超えます。低地部分の平均標高は海抜10メートル以下、台地部分は海抜20〜24メートル程度となっており、区内でも場所によって大きな高低差があります。
文京区は、千代田区、新宿区、豊島区、北区、荒川区、台東区の6区に接しています。面積は11.31平方キロメートルで、東京23区の中では20番目の広さです。
文京区内の地形の特徴
文京区は、主に関口台地、小日向台地、小石川台地、白山台地、本郷台地の5つの台地と、その間に形成された低地から成り立っています。

文京区の地形(資料:景観計画参照)
低地は、縄文時代末期ごろから海水が後退し、その後、河川による浸食を受けて形成されたと考えられています。また、地中を流れる地下水が台地の縁で湧水となって現れ、その流れが樹枝状の小さな谷を刻んだ場所もあります。
このように、文京区は台地と低地が複雑に入り組んだ、起伏に富む地形を有しています。区内に多くの坂道が見られるのも、この地形によるものです。さらに、斜面地の緑や湧水を生かした庭園、地形に応じた土地利用によって発展してきた個性ある街並みも、文京区の大きな特徴です。
緑地や庭園、河川について
地下水が台地の縁から湧水として現れる地域には、現在も多くの緑地や庭園が残されています。関口台地の南側の斜面には、江戸川公園や肥後細川庭園、ホテル椿山荘東京があります。

肥後細川庭園
また、雑司ヶ谷台地の先端部には護国寺、白山台地の斜面には小石川植物園が位置しています。このほか、小石川台地の低地側には小石川後楽園があり、本郷台地周辺には湯島天満宮や根津神社、東京大学の三四郎池などがあります。これらの緑地や庭園の多くは、江戸時代に区内各地に置かれた大名屋敷や寺社に由来しています。
こうした庭園や緑地は、明治時代以降も大切に受け継がれ、現在の文京区を特徴づける景観の一つとなっています。
一方、明治時代の初めごろまでは、区内の谷に沿って複数の河川が流れていました。しかし、その多くは洪水対策や都市化に伴って暗渠化され、現在、地上を流れる河川は主に神田川のみとなっています。
文京区の景観と「文京区景観計画」について
文京区では、地域に残る歴史的な建造物や庭園、坂道、緑豊かな街並みなどを守り、将来へ引き継いでいくために、「文京区景観計画」を定めています。この計画は、建物の外観や色彩、配置などに一定の考え方を示すだけでなく、それぞれの地域が持つ歴史や文化、地形、周辺環境との調和を図りながら、文京区らしい景観を守り育てていくための行政上の指針となっています。(詳しい資料はこちら)
文京区景観計画とは
文京区景観計画は、文京区が平成25年(2013年)に策定した、区内の良好な景観を守り、育て、将来へ引き継いでいくための計画です。単に建物の外観をきれいに整えるためのルールではなく、文京区らしい街並みを地域全体で形成していくための基本的な方針が示されています。
この計画では、景観を建物や道路、公園など目に見えるものだけでなく、その地域に受け継がれてきた歴史や文化、人々の暮らしや活動も含めた「まち全体の風景」と捉えています。
文京区には、起伏に富んだ地形によって生まれた数多くの坂道をはじめ、歴史ある寺社や庭園、豊かな緑が残されています。また、落ち着いた住宅地の街並みや商店街のにぎわい、地域の祭りや季節の行事なども、文京区らしい景観を形づくる大切な要素です。こうした自然、歴史、建物、人々の営みが重なり合うことで、地域ごとに異なる個性的な景観が生み出されています。
文京区景観計画の目的
文京区景観計画は、こうした地域の特徴を一体的な景観として捉え、将来の世代へ引き継いでいくことを目的としています。行政だけでなく、地域住民や建築・開発に関わる事業者が協力しながら景観づくりを進めていくことが、この計画の大きな特徴です。
文京区らしい景観とは
では、文京区らしい景観とは、どのようなものなのでしょうか。
文京区の景観計画では、文京区らしさを形づくる景観の特徴を、次の7つに整理しています。
① 起伏に富んだ地形と坂道
② 歴史・文化
③ 個性あるまち並み
④ 幹線道路や神田川など、都市の骨格
⑤ 人が集まる拠点
⑥ 大規模な緑地や公園
⑦ 人々の暮らしや活動
文京区では、区内全域に一律の景観ルールを当てはめるのではなく、坂道や歴史的資産、緑、住宅地、商店街など、それぞれの地域が持つ特徴を生かした景観づくりを進めています。
また、景観資源が特に集中している地域については、重点的に景観形成を進める地区を設定し、地域住民と協力しながら、その地域にふさわしい基準を定める方針としています。こうした地形、歴史、緑、街並み、人々の活動などが重なり合うことで、「文京区らしい景観」が形づくられています。
景観形成の基準について
では、どのような基準があるのでしょうか。
文京区の景観形成基準は、地域や場所の特性に応じて段階的に設定されており、それぞれの景観にふさわしい基準が定められています。
一段階目:区内全域に適応される「一般基準」
第一段階として、文京区全域で良好な景観を形成するため、区内のどの場所でも守るべき基本的なルールである「一般基準」が設けられています。
一般基準では、主に次のような景観づくりを目指しています。
・地域の個性を尊重した景観をつくること
・周辺の建物や街並みと調和のとれた景観をつくること
・歩く人が心地よさを感じられる景観をつくること
つまり、建物を単体で考えるのではなく、地域の歴史や街並み、周辺環境とのつながりを意識しながら、文京区全体の景観を整えていくための基本的な基準です。
二段階目:地域の特徴を生かす「景観特性基準」
景観形成基準の二段階目では、文京区の景観を特徴づけ、「文京区らしい景観」を構成する「景観特性」をより魅力あるものとするための基準を「景観特性基準」として定めています。
景観特性基準では、坂道や歴史的・文化的建造物、緑のまとまりなど、「文京区らしい景観」を構成する要素や場所を「景観特性」と位置づけています。文京区では、それぞれの景観特性に応じた基準を設けることにより、地域の個性や魅力を生かした景観づくりを進めています。
主な景観特性基準には、次のようなものがあります。
・坂道基準
・歴史的・文化的建造物基準
・まちのまとまり基準
・幹線道路等基準
・拠点基準
・緑のまとまり基準
「緑のまとまり基準」の例
「緑のまとまり基準」は、公園や庭園などの周辺おおむね50メートルの範囲を対象としています。周辺の建物や空間を緑地と調和させ、一体感のある緑豊かな景観を形成することが、基本的な方向性です。具体的には、建物の形態やデザイン、色彩、公開空地、外構などに基準が設けられています。

資料:景観計画参照
三段階目: 特定地区に適用される「地区限定基準」
第三段階として、文京区は、特定の地区において、その地域固有の景観資源や特性を生かすため、よりきめ細かな「地区限定基準」を定めています。
地区限定基準
地区限定基準では、東京都景観計画で定められた「神田川景観基本軸」と「文化財庭園等景観形成特別地区」の基準を引き継いでいます。さらに文京区は、独自に「景観形成重点地区」を指定し、地区ごとの特徴に応じた景観づくりを進めています。
地区限定基準には、主に次のものがあります。
・神田川景観基本軸基準
・文化財庭園等景観形成特別地区基準
・景観形成重点地区基準
神田川景観基本軸基準の例
神田川景観基本軸基準は、神田川の河川区域と、その両側からそれぞれ30メートルの範囲を対象としています。
神田川沿いには、並木や緑地などの豊かな自然が残されており、桜並木が続く花見の名所もあり、水辺と緑、地域の歴史や文化が一体となった景観が形成されています。

神田川
文京区は、こうした景観資源を生かしながら、河川環境の改善や周辺施設の修景整備と連携し、文京区を象徴する水辺にふさわしい景観の形成を目指しています。
景観は「みんなでつくるもの」
文京区の景観づくりは、行政や事業者だけで進めるものではありません。景観形成基準によって、建築や開発を行う事業者には地域の景観に配慮することが求められています。一方、区民にも地域の景観に関心を持ち、身近な緑や歴史的資産、街並みなどの魅力を守る活動に参加することが期待されています。このように、文京区では、行政・事業者・区民がそれぞれの役割を果たし、協力しながら景観を守り、育てていくことを重視しています。
文京区の景観と文京区景観計画まとめ
いかがだったでしょうか。文京区の景観は、行政による計画だけでつくられているのではなく、地域住民や事業者をはじめとする多くの人々によって守られ、受け継がれているのがわかりましたね。文京つーしんでは、皆様の役に立つ情報を配信しておりますので引き続きよろしくお願いします。

































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